療護施設自治会全国ネットワーク機関誌「あした」15号
 
目次

ケアマネージメントてなに
療護施設から通所できます
「障害者110番」運営事業
都障害者施設に人権監視員
可能性の確認と限界への挑戦No2
「外出・旅」への取り組み
電動車いすの体験旅行
障害者の外出に関する総合レポート
全国施設外出・外泊への取り組み  






読者の皆様に   事務局


 「ケアマネージメント」は9月5〜6日の「施設と人権」シンポのサブテーマにもなっていますが、
その重要性を理解して頂くためにも、本号1頁の「ケアマネージメントてなに」をお読みください。


 厚生省から人権擁護のための「障害者110番」制度(4頁)が通達されました。
これは都道府県への通達ですから、それをどれだけ早く実現させるかは各自治体の意志にかかっています。
早期実現を目指して自治会ネットとしても運動をしていきますが、
各地域ごとに連携し各自治体への働きかけることが最重要です。


ケアマネージメントてなに

    


多摩療護園 都倉 高久 

 2000年4月に介護保険の導入が予定されている中で、
最近よく耳にするのがケアマネージメントという言葉である。
このケアマネージメントは80年代後半ごろからニーズとサービスを結ぶ新しい支援システムとして出され、
在宅介護支援センターやボランティア・センター等で導入されてきている。
そして現在検討されている介護保険もその中心は
ケアプランの作成を基本にしたケアマネージメントがポイントとなっており、その重要性が叫ばれている。


 一般的にケアマネージメントとは、
@ケース発見、
Aスクリーニング、
Bインテーク、
Cアセスメント、
Dケア計画の作成、
Eケア計画の実施、
Fケア計画の監視、フォローアップ、及び再アセスメント、

等の取組みをいう。
これらの事を簡単に箇条書きにすると以下の様になる。


1. 援助の必要な人(当事者)のニーズや問題点を把握し、ケアマネージメント援助の内容を説明し、
それを受けるかどうかの了解・契約を行う。(インテーク)

2. 当事者のニーズや現時点での状況(例えば、生活歴、健康状態、障害の程度、自己決定能力等)を
きちんと評価(アセスメント)し、それに対応するサポートやサービスとのすり合わせをし、
それぞれについての力量を明確にする。
このことによってどの様なニーズにどの程度のサービスが必要なのかが明らかになってくる。

3. 1及び2の作業を前提に、ニーズや問題点ごとにケア目標を設定し、
公私にわたる様々な地域資源を活用して適切なサービスを組立てたケア計画を作る。
そこで受けられる援助は時間数や回数などでより具体的に示す。
作成の際に、ケアマネージャー及び当事者の他に家族、サービスやサポートを提供する人々も
参加して進めていく。
このケア計画に当事者の了承が得られれば、ケアマネージャーは計画された援助が受けられるように
関係各所への連絡・調整を行い実施できるように働きかける。

4. ケアマネージャーは、サービスやサポートが計画通り円滑に実行されているのか等の確認・点検を行う。
何か問題が起きれば関係機関に連絡・調整及び修正などのフォローを行う。
さらに当事者の変化やニーズの変更等があれば再度アセスメントを行い、計画の変更・修正をする。


 以上がケアマネージメントの過程であるが、
それは必要とするニーズと様々な社会資源とを効果的に結び付ける福祉的視点に立った機能と言える。
この機能の中心を担うのがケアマネージャー=介護支援専門委員であり、
場合によっては医師、介護福祉士、OP、PT等の専門職も参加してケア計画を作成していく。
しかし、このケアマネージメントを効果的に機能させていくには、
専門職だけで決定していくのではなく、それを利用する当事者の主体性、自立性、選択制の尊重を
全過程で保障されなければ何の意味もない。
現在検討されている介護保険では、要介護認定は行政処分なので苦情処理を受け付けるが、
ケアプランは専門業者に委託するので苦情処理はないとしている。
いずれにしても、このケアマネージメントを行う場合の当事者の主体性や選択制をどう確保していけるのか。
また、自らニーズを主張出来ない人の主体性について、
行政側は成年後見人制度の改正を検討しているものの、それで十分なのか等の課題が残されている。これらについて第4回『療護施設と人権』シンポ&全国交流集会の中でのサブテーマにもなっており、その場での議論と検討をお願いしたい。



療護から授産施設昼の通所出来ます



(4月13日 福祉新聞より)

 厚生省は三月三十日付で、身体障害者療護施設入所利用者が
昼間授産施設での訓練や作業を行うことができるよう、
障害保健福祉部障害福祉課長名で各都道府県・指定都市・中核市障害保健福祉主管部長に通知した。重度身体障害者の社会参加の場を広げることが目的。

 厚生省 通知 重度者社会参加目的に
このほど通知された「身体障害者更生施設等の運営について」では、昭和六十年一月二十二日に出された通知を改正し、身障療護施設入所利用者の残存能力活用や機能維持、社会参加などの観点から、
授産施設での訓練などが可能な利用者に限り、例外的に授産施設への通所を認めるとした。

 授産施設の利用形態は、「措置」ではなく、「利用」となり、身障療護施設利用者で、
授産施設への通所を希望する人が、授産施設へ申し込み、
それを受けた授産施設が市町村へ申請し、承認を受ける。
授産施設での通所受け入れ定員は、毎年度実施している通所事業の定員協議で承認された人数とする。
また、必要経費は、授産施設が市町村へ請求し、支払いを受けることになる。

 
 施設内だけで生活が完結してしまうこともある身障療護施設利用者の授産施設への通所の道が
開かれたのは、昨年十二月に障害関係三審議会
(身体障害者福祉審議会・中央児童福祉審議会障害福祉部会・公衆衛生審議会精神保健福祉部会)
合同企画分科会の「今後の障害保健福祉施策の在り方について(中間報告)」で
「障害種別間の施設利用の弾力化と統合」の方向性が示されたことによる。


 徳川輝尚・全社協全国身体障害者施設協議会会長は、今回の改正について
「施設の相互利用を先取りした形で、高く評価したい。
これを突破口に障害種別を超えた相互利用が広がっていくことを願っている」と語っている。


障害者110番 厚生省通達




「障害者110番(仮称)」運営事業
 
 近年、障害者の人権に関わる事件が頻発する状況に鑑み、
常設の相談窓口による人権相談等に応じる事業を創設することとしている。
 なお、本事業は、平成10年度より全都道府県・指定都市での実施を予定しているので、
準備を含め、格段の配慮を願いたい。



本事業の内容は概ね次のとおりである。

1) 年間を通じて(日祭日を含め)来所、電話、ファックスによる相談窓口を常設する。
  利用時間帯は障害者が利用しやすい時間帯とする。

2) 窓口には、常設の相談員を配置するほか、問題の内容に応じて法律・教育・行政等の
  関係者からなる「専門相談チーム」を編成して、訪問などによる相談体制を整備することにより、
  問題の解決に当たる。


○相談員活動強化事業

 障害者の身近な地域における身体障害者相談員及び精神薄弱者相談員等の活動を支援するため、
具体的活動事例等を用いて実践的な研修を行う事業を創設することとしている。

 本事業は「「障害者110番(仮称)」運営事業」の実施とともに相談体制の強化を
狙いとしており、平成10年度より全都道府県・指定都市での実施を予定しているので、
特に留意願いたい。



98/01/22 全国部局長会議資料(障害保健福祉部)
(企画課社会参加推進室)「障害者の明るいくらし」促進事業より


毎日新聞 1998年(平成10年) 4月10日

障害者施設に人権監視員  都、70項目で評価制


 障害者への虐待が発覚して廃園に追い込まれた「白河育成園」(福島県西郷村)の教訓を受け、
東京都は補助金を出しているすべての障害者入所施設に「施設オンブズパーソン」を置くことを
10日までに決めた。
閉鎖的になりがちな施設の運営をチェックするためで、人権擁護活動に実績のある市民らに委嘱する。
6月にも10施設前後でモデル事業を始める。
都道府県単位でオンブズマン制度を採用するのは初めて。【障害者虐待取材班】


都福祉局などによると、施設オンブズパーソンは権利擁護活動の実績がある人や
社会福祉活動家ら3人前後で構成。
@入所者の権利擁護
A日常生活への援助
B専門サービス
C地域との連携
D施設整備・環境
E運営ーーの6分野で計70以上の評価項目をチェックする。


 施設長については
「施設サービスをめぐり利用者の意見を聴いているか」
「利用者の(障害や個性など)特性を把握しているか」
「職員の意見を聴き民主的運営をしているか」などに注意。

水準以上
水準を満たす
改善努力が必要
即刻改善が必要ーーの4段階で評価する。

 「専門サービス」の分野では、利用者にパニックが起きた場合
「行動障害の状態、訴えようとするものを把握、説明できるか」
受け入れやすい形で情報やメッセージを伝えられるか」など、職員の力量もチェックする。

「運営」でも
「保護者への寄付金の強要がないか」「職員の研修が十分されているか」などが点検される。

 対象は宿泊し生活する入所施設で、今年度は身障者と知的障害者の計10カ所程度で始め、
改善がただちに必要なケースには勧告を行う。
数年以内に都外も含め121全施設に拡大する計画だ。

 白河育成園の虐待発覚をきっかけに、都社会福祉協議会が今年2月まとめた施設での人権侵害相談では、
「2日間木につるし何も食べさせない」など、深刻な被害実態が浮かび上がった。
1994年度の厚生省指導監査では、入所者の預り金の扱いが不適切など何らかの問題がある、
と指摘された障害者施設は全国で27%に上っている。

 「市民の目」を導入する東京都の試みは、他の自治体にも影響を与えそうだ。


可能性の確認と限界への挑戦no2



小田一石

 前回も書いた様に、私は生まれて初めて単身生活を始めた。
しかも全く違う環境で・・・・。
確かに私は日本でも施設にいた以外は、殆ど一人暮らしを行っていた。
だが一人暮らしと単身生活は状況的には似ていても、そこから受ける精神的肉体的影響が
全く違うということを、私は私の体を持って初めて理解出来たと言えであるろう。
 

 一人暮らしというのは「単にアパートで一人で暮らす」だけであって、
電話をすれば遅くても数時間後には誰かが来てくれるという安心感があるが、
私が体験した単身生活は距離的な問題は別にしても、
全くそういう安心感を味わうことの出来ないものであった。
つまりこれは私が望んだこととは言え、
最初の内(今でも時々そうである様に)は例えようもない不安が私を襲った。
例えば夜ベッドに入りアテンダントが帰った後は、何が起ころうと私が自分で対処しなければならない。
ピストルを持った強盗が入って来ようと何かの原因で火事になろうと、
はたまた布団を蹴飛ばして寒い思いをしようと全て自分の責任で何とかしなければならないという現実が、
常に私にプレッシャーを与え続けた。
時差に依る日本からの電話やfaxといった連絡手段も、大きな問題であった。
丁度日本から来る連絡に最適な時間が深夜若しくは早朝であるということが、
「ひょっとしたら緊急の用事では?」といった不安や焦りとなって翌朝アテンダントが来るまで、
私の頭の中に残ってしまうということも屡々あった。


 ご存知の様にC.P.は、精神的ストレスによって緊張のコントロールが崩れてしまったり、
環境の激変に対しても同様の現象が現れる。
C.P.の基本は自分の緊張のコントロールであるから、少しでも緊張のバランスが崩れると
日常生活そのものに大きく影響を及ぼしてくる。
私は先ずこのことを克服する為に、全ての努力を注いだ。
例えば電動車椅子に長時間乗って体に「これがこれからのお前の生活なんだ!」と言い聞かせたり、
ベッドに寝る姿勢も日本でやっていた姿勢に似せながら少しずつ変えていくという、
普通の人間に取っては何でもない細かな配慮を自分で判断し
アテンダントに説明しながらやっていかなければならなかった時期は、
それ自体が大きな苦痛だったように記憶している。



 私にとって大きなハプニングが、アメリカに来て2週間目に起こった。
それは他でもない、「私にとってアメリカでの生活に必要なもの・電動車椅子の故障」であった。
これは私にとって、全く予期せぬ出来事であり出鼻を挫かれた以外のなにものでもなかった。
それに加えこちらの学校は日本とは比べものにならないくらい毎日の宿題の量、
不慣れな集尿機から来る違和感と一日何度も失敗する不快感等、
最初の2週間は真剣に『アメリカに来たこと』を後悔したことも事実である。
しかし電動車椅子も直り集尿機の失敗も数が減り、私の体も自分の置かれた環境に慣れるにつれて、
面白さも感じられるようになった。


 その当時の私の一日の流れは、AM.8:30からPM.12:30まで学校。
午後はPM.6:00までアテンダントが来ないので、
部屋に入ることは自力で出来ても車椅子への乗り換えが一人では出来ず、
従ってコンピューターも打てない、宿題も出来ないといった状態だったので
矢無無く行き着けのカフェをつくり下手な英語を駆使してランチを取る努力をし、
同時に街中にも顔見知りの人を増やす為に時間を費やした。
アメリカ特にバークレーでは殆どの店が車椅子でのアクセスが可能であるから、
ショッピングも映画館も自由に入ることが出来るのであるが、
殆どの店は入り口が狭く店内も物が所狭しと置かれ、
私の運転技術では恐ろしくて入れないと言うのが現実である。
だが店員は、私が店の前で立ち止まっていると「入って自分で探せ」と言ってくる。
これは当然といえば当然であるし、日本の店員のように例え買うのが私であっても
私の頭越しに同伴のアテンダントに喋り掛けるような無礼な態度を取らないと言うのは
素晴らしいことなのだが、狭い店内に入るという私の恐怖は考えてくれないらしい。
実際日本ではその様な店に行くと、どんなに気の利く店員でも入り口まで探している物を
持ってきてそこで選ばせると言うのが私が日本で体験してきた買い物のスタイルであるが、
アメリカではコミュニケーションの問題があるにしてもそのやり方は
『客の意思を尊重しない悪いやり方』であると考えられているらしい。
恥ずかしい話だが、日本で自分一人で買い物をしたという経験を数える程しかしたことのない
私にとって、狭い店内に入り下手な英語でコミュニケーションを図り自分で選び
それをレジまで運んでもらい、お金をポケットから出して払い買った物を車椅子の後ろの
バッグに入れて礼を言ってバックで店外に出るという行為は、
私にとって初めの内は正直言って苦痛であった。
だがこれがノーマルな、しかもフェアーな買い物だと言うことを大分後になって理解した。



 つまり日本の親切とアメリカの親切の捉え方がかなり違うということである。
確かに日本の店員が奥から欲しい物を取り出し私が行き易い所まで行ってそれを買うのは、
私自身楽だし店員もその方が楽であろう事は充分理解出来る。
ただしもしその奥に私が探していた以上に良い物があったとしても、
私はそれを見ることが出来ないし買うことも出来ない。
アメリカのように確かに入る方もまた入れる方も余計な労力を使わなければならないにしても、
私は納得して買い物をすることが出来るし店員も確認して売ることが出来るということは、
どちらが本当の親切なのだろうか。


 今や世界的に有名になったホームレス、日本に比べその数の多さに驚くのがアメリカではないだろうか。
私のアパートの周りにも、「よくもこんなにいるものだ!?」と思うくらい存在している。
確かに日本でも繁華街に行けばよく見かけるが、ここは場所を選ばずどこにでも存在している。
ただよく見ると、日本のホームレスとアメリカのホームレスは違うような気がする。
どこがどう違うか上手く説明することが出来ないが、
少なくてもこちらのホームレスはプライドあるいはポリシーらしきものを持っているような気がする。
同じ“物乞いをする”という行為を取ってみても、彼等に卑屈感は感じられない。
それが良いか悪いか別にして、“物乞い”という行為に「自信」の様なものを感じるから不思議である。
以前聞いた話だが、ニューヨークで或障害者がホームレスを始めた。
すると有名な画家が来て、
彼の車椅子と彼の家?となる場所の壁に素晴らしい絵を描いてくれたという話である。
勿論私は日本でもアメリカでもホームレスをやる気は全くないが、
仮に私が日本でホームレスを始めたとしてどういうことが起こるだろう?。
私が想像するには、私がホームレスを始めて最初の夜にパトカーが来て私を保護し、
病院に収容した後どこかの福祉事務所に連絡し、翌朝にケースワーカーが飛んできて
私をどこかの施設か病院に措置するだろう。
つまり私は日本では、「ホームレスをする権利」は認められないのである。
私がアメリカに初めて来てC.I.L.で話を聞いたときに、
「アメリカでは何でも出来るし何でもやる権利がある。但しその能力が有れば・・・・」
と言われたのを思い出した。
確かにアメリカでは一時期話題になった尊厳死に代表されるように、
「死ぬ権利」を始めとする権利が守られている。
従ってホームレスをする権利もあるし、実際彼等を見かけることも出来る。
(不思議なことに彼等の中にも電動車椅子に乗っている人達がいるが、
彼等はどこで充電するのだろう?)
だから彼等には、ホームレスをする権利とそれだけの能力があるのだろう。


 日本の場合どうだろう。
確かに最近日本でも様々な場所に障害者が進出してきたことは、喜ばしい限りである。
しかしまだそれは、特別な能力を持ちそれなりのコネと運を持った一握りの人々に過ぎないと思う。
つまり日本では例え能力があってもその能力が正当に評価されるということは、
銀座の夜空にオリオン座を正確に認識するのと同じくらい困難ではないだろうか。
その代わり日本にあるのは、「措置・保護」である。
だがしかし措置の「権利」は当事者になく、「措置権者」はあくまで行政側にしか認められていない。
家族にさえも、措置権者に成り得る権利は認められないのである。
まして保護は、当事者にとって「権利と反比例する」ものではないだろうか。
保護されている限り、権利の主張など認められる訳がない。
正に、今の日本の施設の現状がそうであろう。
部屋と自分のスペースと、食べ物と入浴日と入浴する場所と、
そして何よりも欠かせない介護者が常時確保されている施設内に於いて、
自分のプライバシー・自分の生活リズムの確立、或いは外出・外泊の自由、
外部との交際等が認められても限界があるのは当たり前のことではないだろうか。



 先日幸運にも、バークレー大学のD.S.P.(Disabilitie Student’s Program)
のコーディネーターと話す機会を持つことが出来た。
ここはいわば、C.I.L.の産みの親的機関と言えるものなのであるが、それはさて置き彼女が言うのには
『アメリカも30年前までは障害者が一人で街中に出ることなど出来なかったし、
地域も受け入れようとはしなかった。
彼等は考えた「どうすれば自分達も、他の人と同等の生活を手に入れることが出来るのだろう?。」
そこで彼等は誰にも負けないものを、身に付ける努力を始めた。
実際それは、何でもよかった、ただ誰もが認めざるを得ない能力を・・・・。
次に彼等がしたことは、その能力を誰かに売りつけることだった。
勿論社会がすんなり受け入れる訳がない。
彼等は自分達の能力を買わせる為に、あらゆる種類のキャンペーンを行った、
無論政治的な圧力も含めて・・・。
とにかく彼等は、行動した。
少なくても“自分自身”の権利を守る為に・・・・・・。』
ここで面白いと思うのは、“運動の始まり”が「自分の為」だということだ。
確かにこれなら他人に迷惑を掛ける心配もない・自分の出している要求が正しいものかも直ぐに解る・
何時でも始められ何時でも止めることが出来る・・・・、第一、取り組み方が違うのではないだろうか?。
これは日本では、「我侭・暴走」と誤解されやすい。
しかし【手に入れて当然なもの】を手に入れるのに、綺麗事が必要なのだろうか。
彼等は権利を勝ち取り、同時に義務と責任を受け入れた。
保護を拒絶し、安楽から遠ざけられた。
一つアメリカが恵まれているのは、万人があらゆる面で【選ぶ権利】を持っていることではないだろうか。


 次回は私の具体的な生活を紹介しながら、日本の障害者の権利獲得運動の問題点を探ってみたい。


「外出・旅」への取り組み


 

長崎県立コロニー自治会会長 徳 永 政 広



 私達の施設は、昭和49年1月(24年前)にスタートした定員170名の療護施設で、
全国ネットの厚生省への改善要求にも上げていただいた
「雑居部屋(8人部屋18室、4人部屋6室、個室2室)」の最たる施設です。
このことについては、現在、施設側も県の方へ「施設建て替え計画」を要請していますが、
まだ具体的なメドは立っていません。
入所者は、その雑居部屋で10代から70代まで3世代の同居生活を送っている現状ですので、
必然的にいろいろなストレスが溜まり、個々人が大なり小なりの悩みを抱えています。
自治会としては、そのストレスを少しでも解消すべく、いろいろな角度から施設側に改善要求をし、
その実現を図って来たところですが、私達の施設は、佐世保市の中心街から15q程度も離れ、
カーブの多い上り下りの坂道の続く岬に位置しているという地理的ハンディもあって、
なかなか解決できない問題が数多くあります。


 今回の「あした」のテーマの「外出・旅」等の問題は、このような環境の中で生活している私達が、
ストレス解消法の一つとして取り組んできたことですので、その取り組みの経緯と結果をここに紹介してみます。
私達は、この「外出・旅」等の問題については、これまでに自治会と施設側で協議を重ね、
施設の「管理規定」や「入所者心得」を改正して、現在は、ドクターストップのないかぎり、
事前に計画のある場合は3日前までに、当日急に必要となった場合はその日に申し出れば、
その申し出た段階で許可されたものと見なして、原則的に自由にできるようになっています。
しかしながら、私達は収入もわずかな年金だけですし、先にも述べたように地理的ハンディもありますので、
おのずとその回数は少なくなります。
そこで、私達はこのハンディを少しでも解消しようと、次の二つの取り組みを行いました。



 一つは、佐世保駅前から私達の施設の玄関まで1日7往復通っている佐世保市営の路線バスの一部を、
「超低床型かリフト付きバス」に変更してもらう要請活動です。
それは、平成8年12月26日に、要請書を佐世保市長、議会議長、市交通局長宛に
(市長、議長は予算要求のため上京して留守であったが)3通作成し、
市役所で「保健福祉部長、障害福祉課長、課長補佐」、「副議長、文教厚生委員長」、
「市交通局長、次長、総務課長」に、それぞれ30分ずつ面会時間をとってもらって、
詳しく説明しながら要請したのですが、3部局とも「何とかしたい」という積極的な気持ちはありながら、
不幸にもその時期は、「市営バス」が赤字再建団体の指定を受けて、
国の管理下でいろいろな合理化に取り組んでいた事情もあって、
残念ながら現在まで実現していません。


 もう一つは、「施設のリフトバス等の個人貸し出し」についてです。
このことについては、入所者の「生活の質」の向上に努めている施設側の理解もあって、
平成9年の9月から土・日・祝祭日に限って、最大1泊2日まで借りることができるようになりました。
運転手のボランティアは個人で探し、燃料も走行距離に応じて個人がガソリンスタンドで補給して
返すようになっています。
お陰で安い経費で遠出ができるようになり、行動力のある者達は大変助かっています。
現在、車椅子2人乗りの小型リフトバスは2台ですが、
今年もう1台買ってもらう予定になっていますので、
その後は平日にも貸し出しができるように交渉して行きたいと思っています。
この取り組みにおいては、職員と入所者代表の15名で構成する処遇検討委員会で
「貸し出しルール」を作り、運用に問題の起こらないように調整しているところです。


 この他に、施設として取り組んでくれていることとして、職員が付き添って
4月から11月の間に個人の希望を取って4、5人単位で行う各人年1回の「グループ外出」と、
3班に分けて1年に1班ずつ行う「1泊旅行」の二つがあります。
 以上が、私達の施設における「外出・旅」等の取り組みの経緯と結果ですが、
皆さんの参考になることがあれば幸いに思います。
もし、質問等があるときには、下記にお知らせいただければお答えいたします。







           要  請  書
                        平成8年12月26日
  佐世保市長
   光 武 顕 様
                  長崎県立コロニー
                   入所者自治会 「ひまわり会」
                      会 長  徳 永 政 広
                      副会長  井 上 由 雄
                       〃   安 藤 登 光
                       〃   亀 井 裕 樹
    


      超低床型又はリフト付き路線バスの導入について
 
 時下、貴職におかれましては、ご繁務にもかかわりませず、
益々ご健勝のこととお喜び申し上げますと共に、日頃から高齢者や障害者等のハンディのある者に
格別のご配慮を賜り、「人にやさしい街づくり」にご尽力頂いていることに対し、
心から厚くお礼を申し上げます。
 さて、現在の日本は、行財政改革が待ったなしとなり、
高齢化社会が目の前に迫っていることに対する対策も厳しい状況下にありますので、
私たち障害者に対する施策も予算削減の対象となるのではないかと大変心配しております。
 どうか、ハンディのある者が伸び伸びと生活ができますよう皆様のご配慮を宜しくお願い申し上げます。

 お陰様で、国際障害者年を契機に「障害者の完全参加と平等」が一般社会に
理解されるようになってきておりますので、重度の障害を持つ私たちも可能な限り街へ出て
いろいろな行事等に参加していきたいと思っております。
 しかしながら、わずかしか収入の無い施設障害者の私たちにとっての一番の障害は、
交通機関としてタクシーを利用するしかない辺地(市街地まで往復6千円前後)に住んでいることであります。
 そのために、経済的に負担も大きく、外出も月に一回程度が精一杯という現状でありますので、
このことを何とか解決しないかぎり、「障害者の完全参加と平等」は、ほど遠いことと言わざるをえません。
 そこで、幸い、私たちの県立コロニーまでは、玄関まで路線バスを通わせてもらっておりますので、
この路線バスに一台でも超低床型バス又はリフト付きバスを導入して頂ければ、
車椅子のままで気軽にバス利用ができます。
 佐世保市営バスも財政が厳しく、血のにじむようなご努力をされていることは、
私たちも良く理解はできるのですが、高齢化社会の対策と合わせて、障害者の生活支援の一環として、
福祉予算から応援をいただき、この路線バス導入の実現を図っていただければ、
私たちの経済的負担も軽減され、外出・外泊等の機会も増えて大変助かります。
 そして、このことは、他の市町村の手本ともなり、
佐世保市の社会福祉の充実にもつながるものと思いますので、どうか、この実状をご賢察の上、
その実現を図っていただけますよう、ここに謹んでお願い申し上げます。
 貴職の今後のご健康とご活躍を祈念申し上げ、
超低床型又はリフト付き路線バスの導入のお願いとさせていただきます。





電動車イスの体験旅行




白木の郷 北眞利弘


 療護施設自治会全国ネットワークよりの原稿の依頼が何回かあり、
断って来たのですが、今回は外出の件なので、書かせて戴きます。


 私は去年11月に「白木の郷」に転所しました。
その前は6年近く福山市内の「ローズ東村」と云う療護施設にいました。
福山の施設では年に、2、3回、施設よりの外出をしていました。
他にも2ヶ月に一度くらいの割で弟夫婦の訪問を受けて、3、4時間の外出もしていました。
その時は手動の車イスに乗りヘルパーさんを使用していました。

 「白木の郷」に移って、5月2日より5月6日まで、初めて電動車イスで外泊しました。
この外泊の体験談を書きます。
特に移動についてのことです。
まず、施設より広島市内のホテルまでは、弟夫婦に頼み、
普通ワゴン車「タウンエース」で車イスごと移動しました。
この日が5月2日で4泊5日の外泊の初まりです。
雨模様の中、約1時間でホテルに到着です。
その時には、雨も本降りで外出は無理でした。
3日の日も雨模様でしたが、昼からは雨も上がり外出日和のようでした。
この日は「人体の不思議」展の見学でほとんど1日を過ごしました。
4日の日は車イスの体験をすることにしました。


 まず、福祉タクシー(つばめ交通)を利用しホテルより広島駅北口に移動しました。
広島駅北口よりホテルまで1時間半近くの道のりが電動車イスの体験の初まりです。
駅北口より、スロープで地下道に下りて南に進み、その途中で階段昇降機の体験をし、
約10分近くの地下道は終わりです。地下道よりエレベーターで地上に上がり、これより舗道で、車道の走行となります。
広島駅より城南通りに向けての走行は、舗道の傾斜のひどさにビックリした。
それと横断歩道と歩道の段差のひどさにもビックリしました。
ほとんどの横断歩道でいえる問題のようです。
城南通りでは、官庁通りよりは少し走行しやすいようでした。
時間半近く走行し、やっとホテルに到着です。
少しホッとした思いがしました。
そのせいか急に空腹感をおぼえ、やっと昼食を取ることにしました。
2時ごろでした。
それから1時間近く遅い昼食と休憩をとり、次は買い物に行くことにしました。
ほとんど裏通りを走行したせいで道路の悪さ、走行の難しさにビックリしました。
約2時間近くの買い物も終わり、今日一日、今までにない体験でした。


 5日の日、ホテルを10時半頃出発し娘のアパートに行きましたが、
留守なので平和公園まで戻りました。
この時の福祉タクシー(CMC)は初めてなので一段と親切な感じがしました。
今日は、この平和公園前より東に向かって平和大通りを、ワシントンホテルまで進むことにします。
「フラワーフェスティバル」開催中なので人ごみの中をゆっくり休憩をとりとり、
2時間近くかけて行きました。
健常者の方の視線が違うような思いがしました。
ほとんどの人が電動車イスを見たことのないような素振りでした。
昼食もとり、これよりホテルに向かって進みます。
この道中もほとんど裏通りなので道路の悪さが身にしみる思いがしました。
それと広島市内には路面電車があり線路の横断に大変な思いがしました。
またこの度、初めてノンステップバスに体験乗車をおこないましたが、
電動車イスにはあまり便利な物ではありませんでした。
最後の日は少し買物をし、ホテルより、白木の郷へ帰るだけです。
こんどの車は「広島ガイドサービス」の軽自動車なので、
これからたびたび利用したいと思いますが、軽自動車なので少し中がせまく感じました。


 この度の外出で、色々な車に乗り高くつきましたが、福祉タクシーが一番、よかったと思います。
これからもいろいろな交通機関を利用して外出、外泊をしてみたいと思います。




障害者の外出に関する総合レポート(前編)




村上  哲史

 先日、自治会ネットの小峰さんから手紙が届きました。
障害者の外出について何か書いてほしいという内容の手紙でした。
またかと思いました。
というのは、このところあちこちからの原稿依頼が続いていたからです。
しかもその全てが無報酬。
「まぁ、お世話になっている人たちからの依頼だから仕方ないか」と思いつつ仕上げ、
ポストに投函した直後に部屋に戻ると届いていたものだがら、もうガックリ。
でもまぁ、外出についてならみんなに知らせたいこともいっぱいあるし、
字数制限もないようだから書くことにしました。
少し長いレポートになるかもしれませんが、我慢して付き合ってください。



1.施設の行事としての外出について


【行き先別外出】

 うちの施設では、毎年「行き先別外出」というのを実施しています。
「行き先別外出」というのは、あらかじめ設定されたいくつかの日帰りコースの中から
どれか一つを友達と相談して選ぶことが出来るというどこの施設でもやっていそうな外出システムで、
50人の入園者(利用者と呼ぶのが正しいようですが、
そう呼ぶのはなんか上辺だけ繕ってるみたいで嫌いです)を8班に分け、
月1回ぐらいのペースで行っています。
入園者にはそれぞれ職員が1対1で付き添うので、1班の随行人数は10人から14人。
移動手段は主に公用車(ライトバン)2台。
行楽地でのんびりしたり、買い物を楽しんだり、劇場に映画を見に行ったり、
殆どの入園者が楽しみにしている行事です。
というのは、入園者の外出機会は非常に少なく、1年の内でこれ1回しか外出しないという人もいるからです。
それだけにせっかくの外出を出来るだけ楽しんで貰おうと、
外出コースの設定と班編制には大変気を使う。
実は、これらを一手に引き受けて調整しているのがボクなんです。
 

 50人もいる中でなぜボクかというと、ボクが自治会の中で行事関係をずっと担当している
ということもありますが、街の情報、車いすでも遊べる場所の情報、障害者用トイレの有無、
その他いろんな情報をボクが一番持っているからです。
これらの情報と入園者のニーズを総合して外出コースを設定しているわけですが、
その中で一番頭を悩ますのが「食事の場所」。
行楽地などでは比較的大きなレストランがあり団体で行っても大丈夫なのですが、
街の中にはそんな所は非常に少ない。
「お寿司屋さんに行きたい」と言われてもそんな大きなお寿司屋さんなんてあるわけないんですね。
お寿司屋さんだけじゃーありません。
雑誌で紹介されているような専門店はどことも狭い。
車いすが2・3台入れば身動きできなくなります。
そこで思いついたのがホテルの中のレストラン。
結構いろんな専門店が入っていて車いすでも動きやすい。
雨の日だって濡れずに行けるし、なんたって「ホテルでお食事」という響きがリッチで良いじゃないですか。

【自由を抑圧している施設型共産主義】

で、早速担当職員にその案を持っていきました。
でもあまりいい顔はしません。
こんなにいい条件がそろっているのになぜ?と問うと、予算内で食べられるものがあるかなぁって
言うんです。
施設が用意してくれる昼食の予算は1500円なんですが、
それまでだって予算オーバーしたら自分で払っていたんです。
だから「みんなお金持ってるんだから、そういうコースが一つぐらいあってもいいじゃない!」と
食い下がっていました。
すると別の職員が
「私ら仕事に行ってまでそんな余分なお金は払いたくないよ。
それにお金を持っていない入園者もいるんだからその人らのことも考えてあげ!」と
話しに入ってきたんです。
前半は「なるほど」と納得しました。ちょっとケチ臭いけど職員の本音だと思います。
ボクだってそう思うかもしれない。
でも後半はどうも納得できません。
別にお金を持っていない人は外出させないと言ってるわけじゃないんです。
他にもコースはたくさんあるんだし、ホテルのメニューだって高いものばかりじゃないはずです。
もう大人なんだから自分の体の具合や懐具合、
その他いろんな条件や情報を総合的に考えて自己決定が出来なければいけないはずでしょ。
一般社会では当然ですよね。
どうも過保護が過ぎるように思えてならないんです。
「だって理解できない人もいるんだから」と言うけれど、
「それを理解させるのもあなたたちの仕事じゃない」といいたかったですね。
でもこれは非常に難しい事です。
だからボクらの方を押さえてみんな平等のように見せかけて丸く収めようとする。
一見道徳的で正論のように見えるのですが、これは明らかに管理する側の言い分であり常套手段なんです。
こうした方が絶対にまとめ易いんですから。
でも、管理される側から見ればどう考えても迷惑です。
それだけ自由が制限されるのですから。
「何言ってるの、みんな平等でいいじゃない」って言う人がいるかもしれないけれど、
これは断じて平等じゃない。
必ずそれを管理している人が上にいるんですから。
現代社会の中で完全なる平等なんて有り得ないんです。
一時マルクス主義とかレーニン主義だとかがいかにも理想郷のように語られていた時代があったけど、
ふたを開けてみれば支配者にいいように利用されて独裁を許してしまったじゃないですか。
その象徴のソビエトもベルリンの壁ももう崩壊してしまっているんです。
それなのに日本ではやたら「平等」とか「公平」だとか耳障りのいい言葉を使って
上辺だけの平等を叫びまわっている人たちがいる。
「日本型共産主義」とよく言われているんだけど、施設などでは特にその傾向が強いから
「施設型共産主義」と名付けることにします。


 この「施設型共産主義」だってある部分ではすごくいいと思うんです。
だけど、レベルの一番低いところに揃えようとするところが気に入らない。
管理する側にとってはこれが一番管理しやすいんだろうけど、
中にいる者は抑圧を感じるだけでなく「やる気」を失ってしまうんです。
いくら頑張ったところでみんな同じなんだから。
やっぱりボクは共産主義は性に合わないですね。

 【ホテル利用に至る経緯と戦略】

 なんか話しがすごく違いところに逸れてしまったので元に戻しますね。
ホテルでの食事を反対された続きです。
一応その場は引き上げてきました。
上のように共産主義がどうのこうの言おうものなら、ますます態度を固くされて
「こいつは要注意」と睨まれるだけです。
施設でうまくやっていくコツは「みんなと仲良く」が基本中の基本ですから。
といって諦めたわけじゃーないですよ。
ストレートがだめならジャブだってフックだって必殺のアッパーだってあるんです。
フットワークを使った駆け引きも重要です。
で、具体的にどうしたかというと、使えそうなシティーホテルやリゾートホテルに
片っ端から電話してみたんです。
車椅子で動きやすいかとか団体でも大丈夫かとか、
1500円以内のメニューにはどんなものがあるかとか・・・。
するとどのホテルも親切に対応してくれたし、お昼のメニューは意外と安いんですね。
予約をすれば一部屋貸し切りにしてもいいという所もありましたし、
予算にあわせて特別メニューも出来ますしサービスしますから
ぜひ来てくださいと言ってくれた所もありました。
初めは「OH!素晴らしい」なんてびっくりしたり喜んだりしてましたが、
でも考えてみれば平日の昼間のホテルって暇なんですよね。
だから値段を安くしたりサービスをよくして少しでもお客さんを集めたいわけです。
それが障害者だろうとなんだろうと関係ないんです。
元々受け皿はあるわけですから。


 そしてこれらの資料を持ってもう一度交渉に行きました。
するとすんなりOK(実は話しのわかる上司に前もって根回ししていたんですが)。
こうなると、うちの職員は実に良く動いてくれるんです。
実際にホテルに行って下見をしたりメニューを貰ってきてくれたり、
話しはトントン拍子に進んであっというまに実現しました。
今では人気コースの一つです。
要するに職員にだって「入園者にいろんな経験をさせてあげたい」って言う気持ちはあるはずなんです。
でも責任問題とかいろんなしがらみの中で保守的にならざる得ない所がある。
だから初めは手強い敵でもちょっとのきっかけで頼もしい見方になってくれたりもするんです。
「JRを使ってみよう」という案を出したときもそうでした。
これはボクもあまり自信がなかったので時期が来るまで待つ事にしていると、
2年後、職員の方から「やってみよう」と言ってきました。
多分どこかの研究大会か何かで聞いてきたんだろうけど、そんなことはどうでもいいんです。
職員から「よし、やろう!」という言葉さえ聞ければ8割がた成功したようなもんなんですから。
とにかくボクの仕事は入園者のニーズを聞き、
新しいアイデアによる利用可能なコースを設定して職員を説得する事なんです。
新しいアイデアと言っても奇抜なアイデアじゃーありませんよ。
映画館での映画鑑賞とか葡萄狩りとか、
普通の人が当たり前にしている事で多くの入園者が経験したことがないこと
(うちには中途障害が少なく、みんな重度だから未経験なことが多い)です。
「ビアガーデンで一杯」なんてのも面白いと思うのですが、
勤務体制から考えて難しいかなと思いつつ「昼間からやっている所を探す」とか
職員を口説き落とす戦略を練っているところです。



2.施設での個人の外出について

 そのためにはボク自信が街に出ていって情報を仕入れて来なければいけません。
今度は、ボクや他の入園者が個人的にどのように外出しているかをお話します。

【外出願いの抜け穴】


うちの施設は基本的に外出外泊は自由なんです。
ただし、きちんとした付き添いがいて、所定の外出願いに時間と行き先と付き添い人の名前を
書かなければいけません。
この外出願いについては、よく「面倒くさい」だとか「プライバシーの侵害」だとかいう
声が聞こえたりするんだけど、ボクはそうは思わない。
うちの施設が特別手続きが簡単なのかもしれないけれど、
外出直前に提出すればいいだけなんだもん。
家族に「ちょっとどこそこまで誰それと行ってくる。帰りは多分〜時になると思う。
食事は食べてくるから」と言ってるのとイメージ的に変わらないんです。
それに、この外出願いというものは結構いい加減。
考えてもみてください。
一歩外に出てしまえば行き先なんて誰にも分からないし、帰園時間だって
「ちょっと遅くなります」と電話一本しておけばいくらでも引き伸ばせるんですから。
知られたくなかったら正直に書く必要ないわけです(別に嘘を書く必要もないから正直に書いてますけど・・・)。
門限だって決まっているわけじゃーない。
今までに午前様を2回ほどしてしまったけれど別に何にも言われませんでした。
まぁ滅多にない事ですしね、大目に見てくれているんだと思いますが・・・。
外出手段としては、主に母の車に乗せていってもらう事が多いですね。
幸い母はフリーの仕事をしているので比較的自由に動けるんです。
目的地でボクを降ろした後母はその付近の客回りに行きます。
その間にボクは自分のやりたい事をする。
外出願いの盲点を突いた裏技の一つです。
その他、友人や知人が送り迎えしてくれる事も多いです。
リフト付きタクシーを使う事もあります。
この時は出来るだけ大勢を誘います。
みんなで割り勘にすれば安く付くからです。
バスは車椅子のボクにはちょっと無理ですね。
鉄道は使えなくはないんだけど、やはりドアtoドアが便利です。


 こんなふうに規則の上では比較的簡単に外出できます。
けれど実際に頻繁に外出しているのは、ボクを含め2〜3人。
時々タクシーを呼んで出ていっているのが4〜5人。
あと近所を散歩したり買い物に出かけたりしているのが5〜6人ぐらいってところでしょうか。
みんな外出が嫌いなわけじゃーないんですよ。
その証拠に家族が面会に来ると必ず出ていっていますから。
でも家族だってしょっちゅう来られるわけはない。
他に連れて出てくれる人がいないから当然外出の回数は少なくなるわけです
。だから、年に数回の寮母さんとの散歩をみんな楽しみにしている。
結局、付き添い人を確保出来るかどうかというのが大きなキーポイントになっているみたいです。



 今回は一応ここまでにしておきます。
次回は、付き添いがいらない「単独外出の解禁」へ向けての交渉の過程と、
アメリカ・イギリス両国での体験および日本の未来への希望なんかを書きたいと思っています。
どうぞお楽しみに!



全国施設 外出・外泊への取り組み



小峰和守

 施設利用者にとって外出することはどんな意味があるのでしょうか。
例えば、買い物のための外出を例にとって考えてみましょう。
まず、外出までに体調を整え、着て行くものを選び、予算を立て、出掛けては店員と会話し、
製品を選び、お金のやりとりをし、終わってからは買ったものに判定をしなければねなりません、
単に社会参加というだけではなく、自己決定と自己責任に基づく自己実現の最大の機会と考えられます。
ひょっとするとカルチャーショックのチャンスでもあるでしょう。
各地の自立生活センターで行われている自立生活プログラムの中には必ずこの「外出」が入っているのも、
それだけの必要性を認めているからでしょう。



 では、そんな外出・外泊を全国の施設ではどのように実施し、
どのようにその機会を拡大しているのでしょうか。
全療協の「生活向上のための施設サービス検討(資料)」(施設利用者の生活の質向上のための取り組み事例集)
を見ながら感じたことを記しておきます。
また、気がついたものを拾い出して◇以下に示しました。
《この事例集(全77頁)には外出以外にも、食事、入浴、など施設生活に関わるすべてに対する
実践例が載っております。ご希望の方は事務局まで》



1.1 外出・外泊の方法
 施設サービスとしての外出・外泊は大まかに買い物、日帰り旅行、宿泊旅行の
3種類に分けられるようです。
その各々の場合でも、少人数化が進み、一部では個人個人のニーズ(美容院、パチンコ)に
合わせた外出・外泊も可能になりつつあるようです。
また、旅行については利用者や利用者自治会の参画も始まっています。
施設の主体(主人公)は利用者であるあることが浸透している現れと考えられます。
今後も、多目的、少人数化、自主企画はますます増えていくでしょう。
(注:以下の文中に表わされている回数は、施設が実施するサービス(訓練)の回数を示しているのか、
利用者一人が受けられるサービス(訓練)の回数を示しているのか注意が必要)



買い物を中心とした外出を利用者全員を対象に一人年2回班ごとに実施
月1回のショッピングを実施
週1回のショッピング外出を実施
パチンコ外出。
美容院、コンサートなどの希望があれば随時対応している。
  付き添いは職員だけでなく家族やボランティアにも希望に応じて依頼している。
面会の少ない利用者に対し職員の付き添いにて出身地域訪問やお墓参りなど行っている。
自力受診訓練を行い近隣への外出を広げようとしている。
外出について自治会と話し合い、グループ外出から個別希望外出に切り替え、
  職員が介助支援していく形にした。
小グループでの日帰り旅行を計画。5コースから好きなコースに参加して貰う。
ひとり当たり最低年2回の日帰り旅行を行っている。
個々の利用者の希望や状態に合わせていくつかのコースを用意し一泊旅行を実施。
一泊旅行の実施。行き先は自治会で決定する。
4人程度の小グループで一泊旅行を自分たちで計画し決定している。
  グループ編成は希望は聞くが付き添いの都合などあるので職員が決めている。
個人外出のほかに施設で企画するものとして宿泊旅行
  (日帰りから3泊4日まで、体調と希望に応じて)、クラブ外出、レク企画による外出、
  地域(ボランティア)交流による外出などを実施。
家族からの要望が出て一泊旅行と3泊4日の海外旅行を実施している。
昨年よりスキー旅行や希望者にによる海外旅行を実施している。



1.2 外出・外泊拡大のための取り組み


 施設完結型で外出・外泊の拡大を図っても、職員数に限界があり、困難と思われます。
いろいろな社会資源(ボランティア・社会福祉協議会・自立生活センターなど)を有効に使っていく工夫、
社会環境を好転させていく工夫が始まっています。
そのためにも利用者、施設ともども地域との連携を深めていく必要があります。
この「地域との連携」の重要性は地方分権が進み様々の権限が県市町に委ねられている点からも
窺えます。
 各施設での工夫を以下に示しておきます。



◇施設車両の利用を承認している。
◇駅やショッピングセンターまでの送迎サービスを利用者に保障し、
 外出先では利用者の自由行動を保障している。
◇毎週金曜日を近隣のデパートなどへの定期運行日としてリフト付き大型バスの運行
◇家族や友人などとの個人外出を奨励し、必要な場合職員運転で施設の車両を貸し出している。
◇タクシー利用による個人別外出を推進、職員付き添い有りとして利用者の外出機会を拡大した。
◇利用者が希望する海外旅行に職員を 介助者として派遣するサービスを昨年から実施している。
◇介護者の必要な人は申し出て施設がボランティアを依頼している。
◇自分で要望を伝えるのが困難な方については、
 個別援助担当職員が中心になって外出要望を組み込むようにして買い物や外食などを実施する。
◇意志表示しにくい利用者に対してもアテンダントボランティアの利用を助言し、
 外出の機会を拡大している。
◇JCIL(日本自立生活センター)と連帯しアテンダントシステムの活用を推進している。
◇外出方法やボランティアの利用方法(付き合い方)などへの援助プログラムを行っている。
◇外出ボランティアを募り安全で快適な外出を目的に車いす操作法、
 介助方法を拾得していただいている。
◇買い物外出時に中学校生の協力を得ている
◇地域社会福祉協議会と連携しガイドヘルパー利用を推進している。
◇有料ボランティアの利用により外出の機会が増え充実してきた
◇地域のスーパーや飲食店のバリアフリー化運動の推進を予定している
◇路線市バスに車いす昇降リフトが付いており、これを利用し単独外出を積極的に推進している。
◇電動車いすでの外出や散歩のために、近隣施設とともに近くの道路を安全に通行できるよう
 行政に働きかけ、歩道設備などの改善要求を行っている。
◇施設周辺道路の安全確保への保護ゾーンを申請予定
◇施設周辺地域の住民会合へ出席し、利用者外出時の安全確保、協力の要請。
◇利用者へ地域の施設の設備や催し物についての情報提供している。
◇音楽会、映画などの情報提供を実施。
◇市内の交通などのアクセス状況を調査し、絵地図で福祉マップを作成した。


2. 単独外出
 「常時介護を必要」とする施設利用者は単独外出などできるはずがないので
 全面禁止しているとの見解もあった。
しかし、現在では、車いすを押す代わりに電動車いすが、
階段の上り下りはエレヴェーターが介助なしで運んでくれる。
また、買い物では近くにいるお客さんが、金銭の支払いはレジ係の店員さんが介助してくれる。
さらに、デパートによっては食事介助もしてくれる。
立法化された当時より、介護してくれる人も物も増えています。
町も人も優しくなってきていることを見落としているようです。


◇単独外出は資格制度を設け一定のルールの中で自由にしている。
◇サークル活動である電動車いす友の会を通じての単独外出の免許発行を行っている。
◇単独外出を可能にし促進するための具体的諸条件(施設、地域社会そして当事者や家族を
 めぐって)を近隣7施設の生活向上委員会で検討し明確にした。
◇自立、社会参加、地域との交流を促進するためにも、外出の方法を見直し、タクシー利用、
 単独外出、グループ外出、電動車いす利用など一人ひとりに可能な外出を利用者と共に考え、
 家族の了解をとり本人からの届け出により実施できるようにした。
◇施設近郊の外出、散歩などについて単独外出を認める方向でQOL委員会を設け、
 入所者自治会代表を交え協議と検討を行っている。
◇事故などに備えるため保険に加入するよう勧めてており、
 電動車いすで単独外出をするほとんどの利用者が加入している。
◇電動車いすで単独外出可能な利用者について交通マナー教室を開催、
 安全確保と秩序の意識を高めている。
◇単独外出訓練を行い、免許取得者には自由に外出できるようにしている。


3. 外出・外泊のルールについて
「許可制」から「届出制」に「届出制」はさらに「口頭制」にそれぞれ進んでいるようです。


◇外出(泊)の許可制を届出制にし、突然の外出も可能にした。
◇外出に関しては原則的に規制を設けず各人の責任において自由にしている。
◇事前連絡を前提として夜間外出の制限時間をなくした。



4. 職員ボランティアについて
 職員ボランティアについては施設ごとに対応がまちまちのようですが、
実践報告という性格からでしょうか、いずれも肯定するものばかり5例ほど載っていましたので、
以下に1例だけ示しておきます。


◇時間外にも利用者と職員が行動を共にすることは業務に無関係とは言えず、
 不均衡が生ずる恐れがあるとの議論もあったが、職員間のボランティア意識を高めるためにも
 必要との意見もあり試みを行ったところである。